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第七話 「同窓会」
scene-1
歓談の時間が経つにつれ、皆すっかり昔の顔になっていた。卒業以来二十年振りに開催された小学校の同窓会。めっちゃ恐かった担任がまるっと好々爺になっていたり、密かに好きだった女子が赤ん坊を抱いてたり‥僕は水割りを片手に、そんな“同窓会あるある”にどっぷり浸っていた。
仲間達としばらく話し込んでいて、ふと思い出した。当時クラスの男子を集めて結成‥でも、たった三日で解散してしまった“少年探偵団”のことを。
scene-2
江戸川乱歩が大好きだった。明智小五郎と怪人二十面相の知恵比べに夢中だった。そして素晴らしいアイデアが浮かんだ。
-僕らも少年探偵団を作るぞ!-
勿論僕が団長だ。手製の団員証を作りクラスの男子たちに配った。探偵とはなんぞやを得意げに話し、放課後は事件を探して町内を警備して回った。
しかし‥そう、小説のような犯罪など現実には起きないのである。
scene-3
町はのんびりと平和だった。怪しい老婆やピエロの格好をした怪人などいるはずもなく、最初は乗り気だった皆もすぐに飽きてしまった。
と言うわけで、少年探偵団は三日で解散‥
昔話ついでに「あの時のことを覚えているか?」と仲間達に尋ねてみると、概ね「あーそう言えば」くらいの反応。
だよな、そう納得した僕の肩をポンと叩く男がいた。
scene-4
振り向くと、ん?誰だこいつ? と言うくらい覚えがない奴。
「これ、まだ持ってるよ」
彼の手に、あの時僕が作った少年探偵団の団員証が!
そうか、思い出ってこういうものかも知れない。意外な場所でひっそりと息づいている‥「じゃあ」そう言って別の輪に戻って行く彼の名を、僕は最後まで思い出せなかった。
end
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