1:出会いは偶然だった

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1:出会いは偶然だった

『ジュリ。君の活躍のお陰で、この国を覆わんとしていた陰謀の雲は去った。国家の代表として礼を言わせてもらうよ』  きらきらと太陽の光が差し込む謁見の間で、玉座に収まる、整った顔をした金髪碧眼の青年が、優雅に胸に手を当て、私に向けてゆるりと頭を下げる。  いや、私にではない。  パソコン画面の中で、現実とも錯覚する姿の青年が向き合うのは、黒髪に赤い瞳を持つ、端正な顔つきの少年。身長は、私と同じ百六十八センチメートルに「設定した」アバターだ。  名前はジュリ。私と似た名前にした。特に深い意味は無かった。無いつもりだった。ただ、この幻想の世界に身を委ねれば、現実でからっぽの私も、少しは世の中の役に立っている気分になれるだろうか。そんな下心があるにはあった。 「(ジュリ)」は、この世界では唯一無二の存在として必要とされている。でも、現実の私は、からっぽだった。
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