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6:星咲く場所で
次の日。
『ジュリ?』
待ち合わせに現れたミミは、おはよう、より先に、不思議顔をして首を傾げた。それもそのはず。「私」はいつもの戦闘着ではなく、黒のライダースジャケットにパンツ、ロングブーツという、おしゃれ装備に身を包んで現れたのだから。これを揃えるために、早めにログインして、フリーマーケットを眺めていたのだ。
『ミミ』
この思いつきは、ミミにどう受け取られるだろう。少し緊張しながらチャットを打ち込む。
『思い出、作りに行こう』
何を意味するのかわからなかったのだろう。ミミがもう一度首を傾けたので、言葉を重ねる。
『戦うのはもう無し。あちこち回って、スクショ撮ろう。ミミも昨日のに着替えて』
これが私が考えた末の、ミミと一緒に遊ぶ方法。ミミに申し訳ない思いばかりさせるんじゃなくて、二人とも楽しめるように。それなら、現実で外出できない鬱々とした思いを吹き飛ばす勢いで、この世界で沢山綺麗なものを見て、スクリーンショットを撮って、残しておければ。
ミミも理解したのだろう。大喜びする感情表現をしてみせてから、昨日のワンピースに早着替え。このゲームでは、コントローラのボタンひとつで装備が変わるようになっているから、現実みたいに待つ必要も無い。
『じゃあ、お嬢様』
「私」が笑って手を差し出す。
『お手をどうぞ』
数秒、チャットを打ち込んでいるのだろう間があった後に。
『お姫様みたい!』
ミミはとても無邪気に喜んで、「私」の手を取った。
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