詩「巨大な種」(詩人会議掲載)

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それは巨大な種だった 大の大人が両手でも抱えきれないほど  の大きさで 推定3トン それを植えるのに特殊な土地が必要だ 例えばアメリカのメテオ・クレーター その真ん中に重機を使って植えるしか  なく 果たしてどんな芽が出てくるのだろう それはいったいどんな植物なのだろう その世界の雰囲気からきっと人類は滅  亡寸前だったに違いない どこかしらに漂う哀愁感 よく考えたら 太陽が昇っていなかった気もする 核戦争でもあったのかもしれない だとすればあの巨大な種は 誰かが夢にみた希望の塊だったんじゃ  ないだろうか ただその夢を見たのが 娘がとっておいた焼き芋を 勝手に食べてしまった情けないぼくだ  ったので あの種がいったいなんだったのかは いまとなってはもう分からない 昼寝の途中に尿意で目が覚めて 続きを見ようとまた目を閉じたけど もうどうしても眠れそうもなくて 仕方なく起き上がって顔を洗い こうしていまは詩を書いているという  わけだから でもぼくの脳裏にまだ残っている あの種の色といい形といい大きさとい  いそれはとても夢だとは思えず そういえばぼく自身も夢を追いかけて  いる一人なもんで だからつい無理やり前向きなことを考  えたくなるのだけど やはりあの種の正体は大きなサツマイ  モにしておこうかと思うのです。
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