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「月海さん! なぜ逃げるのですか!」
保健室から逃げた月海と暁音は、真っすぐ廊下を走っている。引っ張られるがまま、暁音は月海の後ろを走る。その際に、なぜ逃げるのか困惑の色を滲ませている声で問いかけていた。
「今のあいつは何をするか分からない。まだ、殺意を向けてくれた方が助かるよ。対処法を考える事が出来るからね。でも、今のあいつの対処法は分からない。だから、分かるまで逃げるしかないんだ」
廊下を走り続けると、目の前に下りの階段が見えてきた。
月海はその階段を下ると。そう思ったが、なぜか隣にある登りの階段を使い駆け上がり始めた。
「え、この上は確か屋上?」
「うん」
「逃げ場なくなりませんか?」
「知ってるよ」
「どうするつもり何ですか?」
「見ていればわかる」
そんな会話を交わしながら屋上へと向かい、錆びている鉄製の扉を開くためドアノブを握る。錆び付いており、開ける際不協和音が響き耳を塞ぎたくなった。だが、そのような事など気にせず、月海は勢いよく開け、暗雲が立ち込めている外へと出た。
時間が進み、雲も太陽を隠してしまっているため暗い。風も強くなってき、二人の髪を荒々しくそよがせる。
雨の匂いが鼻を掠める中、暁音は自身の髪を抑え視界をクリアにする。
中心で立ち止まった月海は、白衣が風で翻す中、黒い雲が立ち込めている空を見上げていた。
「一体、何をするつもりですか?」
「想いの糸が見えないという事は、僕に会う前にはもう切れてしまっているのが可能性の一つにある」
「可能性の一つ……。そのような言い方をするという事は、他にも可能性が考えれるという事ですか?」
「そうだね。もう一つは滅多にない可能性だからあまり考えてなかったけど。今回は確率的に後者の方が高い」
淡々と話す月海の言葉を、暁音は何も言わず聞いている。すると、またしても足音が聞こえ始めた。
「来た……。あの。その後者は一体、どのような理由があるのですか?」
「それは──……」
彼が質問に答えようとした時、扉が不協和音と共に開かれた。そこには狂気的な笑みを浮かべた梨花が、一眼レフカメラを片手に立っている。血走らせた目は、屋上の中心に立っている月海へと向けられていた。
「ねぇ。逃げないでよ」
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