6.眩しいときは、

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「敬梧、海! 海だよ!」 「俺も見えてますから! 慧さんも漕いで!」    地上16mの高さを、ふたりで横並びに自転車を漕いでいる。高台のため景観がよいとレビューにあったが、ほんとうに遠くまで見渡せた。穏やかな海が、日の光を受けてまぶしい。 「なんだか、ギシギシいってる!」 「だから、足を止めないで!」  足下のペダルを漕ぐと、レールとの摩擦で音が鳴る。スピード感はないのに怖い。3分間のサイクリングは意外と足にきた。 「海にダイブできそうだったね」 「想像以上の景色でした」    乗客は親子連れと男女のカップルばかりだったが、こちらを気にとめる様子はなかった。敬梧たちは、次をどれにするかと歩きだす。   「垂直……」 「絶叫系はやめとく?」  海抜200mからの垂直急降下と書かれたアトラクションの前で立ちすくんだ。慧が気遣わしげな顔をしている。他にも、立ったまま進むコースターや、後ろ向きに進むものもあるようだ。中学生くらいの子たちが笑いながらおりてくるのに、大人の自分が乗れないわけがないと鼓舞して乗りこんだ。 「なんか、ヒュッてなったね……」  慧の発言に、涙目でコクコクとうなずく。こんなとき共感できるのも、同性ならではだろうと思った。  
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