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9.泣きたいときは、
慧さんとちーちゃんの両親との話し合いは、園長が主導して円満に運んだらしい。
夫婦間の行き違いが発端で、慧に非はない。地面に頭をつけて謝られ、かえって恐縮したと笑う。話し合いの結果次第では、ちーちゃんが保育園をやめることもありえたので、回避されて慧もほっとしていた。
斉木には、敬梧から連絡した。
慧は、いまさら過去のことを話す気はないようだし、メンタルトレーニングに時間がかかってしまったとは知られたくないだろうから、敬梧の無神経さが原因だったと伝えた。
「そうか。やっぱりな」
斉木はそれだけ言うと、さっさと電話をきってしまった。おそらく、なにか気づいても、口には出さないつもりだろう。
青田とは慧の希望で、一緒に食事をした。
青田夫婦と敬梧に、こころづくしの料理をふるまう慧はとてもうれしそうだ。
慧は、斉木の妻の瑠璃と友人だが、青田の妻の紅子とも、すぐに仲良くなった。いまだに、会話で緊張してしまう敬梧は舌を巻く。そんな敬梧を、大きな瞳が見つめてくるので、赤い顔を隠すのにも困った。
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