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カフカの変身の主人公は起きたら虫になっていたそうだが、俺、加藤稔の場合は怪獣になっていた。頭だけが。
「なんっじゃこりゃー!?」
声は人間のままだった。
俺は鏡に映った顔をまじまじと見る。
どこからどう見ても、頭だけが、特撮に出てきそうな、あの爬虫類のような怪獣になっているのだ。
今朝、やけに皮膚がゴワゴワして突っ張ると思っていたが、まさか自分の皮膚が高級な鰐皮のようになっているとは思わなかった。売れば高いかもしれないが、剥ぐのは痛そうである。
「兄ちゃん、うるさい……う、うわわああああああ!?」
妹が悲鳴を上げたのを見て「これは妹によるドッキリ」という可能性は潰えた。妹以外の他の家族がやるとは、到底思えなかったのである。
もしや夢ではないかと頬を引っ張ろうとしたが、硬い皮膚は掴みにくい。代わりに手の甲の皮膚をつまむと痛かった。夢ではない。
となると心当たりがあるのは昨日変わった蜘蛛に刺されたことである。
もしやと思い、指先に力を入れてみる。
何も出てこなかった。
一瞬、某映画監督を訴えようか迷った。
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