怪物になったら

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 その日の朝は家中が大騒ぎになった。  とりあえず平静を保つために、俺はいつも通り学校に行くことにする。 「なにあれ、怪物!?」 「不審者じゃない!?」  校門前で大騒ぎになった。  呆然としていると母から電話がかかってくる。 「稔、学校行くのやめなさい! 大騒ぎになるわよ!」  その忠告、一歩遅かった。  騒ぎを聞き付けた体育教師が刺股を持ってこっちに向かって来る。  俺はクールに片頬を上げて笑おうとしたが、皮膚が硬いため上手くできなかった。  怪物となった俺にとって刺股ごとき敵ではない!  俺は果敢に体育教師に立ち向かった。  ――結果、力は人間の時と変わらないことが判明した。刺股強い。 「……本当に加藤稔くんなんだね?」  不審者として連れてこられた俺を、校長は疑わしげに見る。 「そうですよ。ほら、学生証です」  俺は校長に学生証を差し出すが、それを見ても校長の眉間の皺は消えない。 「なにか怪獣のマスクや特殊メイクをしている訳では無いのだね?」 「違います」 「……なぜそのような頭になったのだね?」 「正直、わかりません」  俺は素直に答えた。  校長は大きくため息をついて俯く。 「まさか退学とかないですよね?」  俺は心配になって聞いた。別に真面目な生徒という訳では無いが、何もしてないのに罰を受けるのは嫌だった。 「そこまでは言わんが、元に戻るまで休学するのはどうだい?」 「元に戻るのかもわからないのに?」  校長はぐっと言葉に詰まる。 「たしか野球部にも怪物と呼ばれている先輩がいましたよ?」 「しかし、彼は人間だし……」  もしも俺の顔が元の人間のものだったら冷笑を浮かべていただろう。顔が怪獣になっただけで俺は人間と判断されなかったのだ。 「わかりました。俺は学校を辞めます」  自分でもびっくりするほど冷たい声が出た。 「そうか……」  その言葉に校長はわかりやすいほど安堵する。  そんな校長を冷たい目で見て、俺は部屋を後にした。
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