第四章

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 それから二人は、二言三言(ふたことみこと)話してから別れた。  ロキは城塞のほうへ踵を返し、ルイスはアイリスを抱き上げたまま荷物を持って、狩小屋に入る。 「ルイス。  ねえ、ルイス」  寝室の扉を開けるルイスに、アイリスは必死に言った。 「旅に出るのは五日後なの?  今夜じゃないの?  どうして?  あの人がそう言ったから?  あの人は誰?」 「彼はロキと言って、僕の弟なんだ」  ベッドにアイリスを下ろして、ルイスは答えた。  ベッド脇に荷物を下ろし、それから暖炉の火に目を向ける。 「部屋は暖まっているようだね」 「弟なの?  なんで弟の言うことをすぐに聞いちゃうの。  五日後なんて嫌。  いますぐがいい」 「アイリス」  ルイスはアイリスのとなりに腰を下ろした。  琥珀色の瞳が、薄闇の中で光っている。 「予定を変えてごめん。  逃亡の旅は最終手段なんだ。  もししなくて済むのなら、しないほうがいい」 「どうして!?」  身を乗り出すアイリスの、外套のボタンをルイスは外し始めた。  暖かい室内ではすぐに外套を脱がないと、汗をかいて良くない。
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