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「加えて、朝食には温かいスープをご用意いたしますね。
おカゼを召してしまうようなことがあったら大変ですもの。
お兄様方がたいそうご心配になりますわ。
もちろん、このわたくしもですけれど」
「そうね、気をつけなくちゃ。
ありがとうマイア」
花壇や木々を、数人の園丁が手入れしている。
エルサが通りかかると、皆が手を止めて恭しく会釈した。
エルサは一人一人と名を呼び交わし、彼らと親しくおしゃべりをした。
これがエルサの日課であり、毎朝の楽しみである。
マイアに言わせれば、これは貴族がすることではないらしい。
それでもエルサは、人とおしゃべりをするひと時が好きだった。
冬に咲く花の手入れの仕方を、老齢の園丁から教えてもらう。
春のそれとはまた違った手順で興味深い。
両膝に手を当てて花壇を覗き込むと、長い銀髪がサラサラと肩から落ちた。
エルサの肌は、乾燥した空気の中にあっても瑞々しく潤っている。
頬はほんのりとピンク色に上気して、すみれ色の瞳は花壇の花びらをやわらかく映している。
体つきは華奢で、大人の女性にまだなりきれていなかった。
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