第一章

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「加えて、朝食には温かいスープをご用意いたしますね。  おカゼを召してしまうようなことがあったら大変ですもの。  お兄様方(にきさまがた)がたいそうご心配になりますわ。  もちろん、このわたくしもですけれど」 「そうね、気をつけなくちゃ。  ありがとうマイア」  花壇や木々を、数人の園丁(えんてい)が手入れしている。  エルサが通りかかると、皆が手を止めて(うやうや)しく会釈した。  エルサは一人一人と名を呼び交わし、彼らと親しくおしゃべりをした。  これがエルサの日課であり、毎朝の楽しみである。  マイアに言わせれば、これは貴族がすることではないらしい。  それでもエルサは、人とおしゃべりをするひと時が好きだった。  冬に咲く花の手入れの仕方を、老齢(ろうれい)の園丁から教えてもらう。  春のそれとはまた違った手順で興味深い。  両膝に手を当てて花壇を覗き込むと、長い銀髪がサラサラと肩から落ちた。  エルサの肌は、乾燥した空気の中にあっても瑞々(みずみす)しく潤っている。  (ほお)はほんのりとピンク色に上気して、すみれ色の瞳は花壇の花びらをやわらかく映している。  体つきは華奢(きゃしゃ)で、大人の女性にまだなりきれていなかった。
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