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「この一帯にも結界を張った。
気づかれる心配はない」
「ああ、そう。
で、遅れた理由はなに?」
「エルサのことで、カストル兄さんに呼び止められたんだ。
エルサがひどく落ち込んでいると」
ルイスが声を低めた。
ロキは沈黙する。
それからルイスは、アイリスを振り返ってこちらに駆け寄ってきた。
「アイリス」
黄金の結界が消えた。
しゃがみこんでいるアイリスの前に膝をついて、頬に手を添える。
「遅くなってすまない。
怪我はないか?」
「うん……」
アイリスはうなずいて、涙で潤む瞳をルイスに向けた。
「うん、どこも怪我してない。
これをルイスに届けに行こうと思ったの」
手袋を差し出すと、ルイスはそれを受け取ってローブの懐に入れた。
「ありがとう、アイリス」と言って、頬にキスをする。
そのままアイリスを抱き上げると、背後のロキを振り返った。
「やり方はどうあれ、この子を止めてくれたことには感謝するよ。
けれどおまえは城塞に戻ったほうがいい。
エルサのそばにいてやってくれ」
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