第四章

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「もちろんそうするつもりだけれど、兄さんも、もうしばらくは城塞か狩小屋のどちらかに身を置いていてほしい。  まだどこにも行かないで、ルイス。  国王の動きが心配なら、彼は大怪我を負って十日は動けない状態なんだ。  根性出せば五日で動き出せるかもしれないけれど、猶予はまだある。  もう少しだけ待っていてくれないか」 「――――」  ルイスは眉を寄せて考え込んでいる様子だ。  アイリスは不安になった。  出発を遅らせるのは嫌だった。  しかしルイスは、慎重な声で言った。 「それは、アイリスの救済に関わることなのか?」 「それ以外のなにがあるって言うのさ」  わたしの救済?  アイリスは、ルイスを見上げた。  ルイスは難しい顔をして黙したあと、言った。 「五日待てばいいんだな」  アイリスはショックを受けた。  ロキが、ちらりとアイリスを一瞥した。 「――そうだね。  それくらいあればいいと思う。  でも、行く前は僕に一言告げてほしい。  行き先まで教えろとは言わないよ」 「わかった」  ルイスはうなずいた。
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