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四人の態度は見事にばらばらで、個性的だな、という第一印象を由宇が抱くのは必然だった。
「ああ、ついでに、君の隣にいるのが遠田という男だ」
「少将、ついでって酷くありませんか?」
「ちなみに遠田は、階級としては中佐で、この部の隊長を任せている」
思い出したように付け加えた加賀美に、隣の青年――遠田は軽く抗議するが、加賀美は当然の如く聞き流した。遠田も、それについて特に言及しないところを見ると、これが彼らの通常らしい。
どうやらこの部屋に集う面々は、一筋縄ではいかない、癖のある者たちばかりのようだった。
「それで、加賀美さん。一体僕に何の御用があるのでしょうか」
浅く息を吐き出し、頭を整理した由宇は改めて本題を問うた。
軍や階級のことなど全くと言って良いほど知らないが、隊長を任されている身分の者が自らの足で探していたり、部の責任者が出てくるということは、余程重要な案件なのだろう。それがおそらく妖に関わることであるのが、何ともしっくりこないが。
問われた加賀美は、器用に片方の眉を上げた。
「遠田から聞いていないのか?」
「往来で話すと困ることになるだろうからと言われ、詳しいことは何も」
すぐさま遠田に鋭い視線が飛んだが、当の本人はどこ吹く風で飄々としていた。全く響いていないのが目に見えて分かる。
軍人たちは、胡乱気な視線を遠田に送ったり、憐みを含んだ目を由宇に向けたりと様々だった。
加賀美は、もう一度大きなため息を吐いたが、仕方ないと言う風に口を開いた。
「……まず、この部のことから話そう。この部は、陸軍に所属してはいるが、表向きには秘されている。幽霊や妖怪……人の目には見えぬとされた妖と呼ばれる存在が絡む事件を担当する、怪異専門部隊だ」
怪異専門部隊。その名称に、由宇は顔には出さないものの少し驚いた。
堅苦しい印象のある軍に、妖という、世間一般ではとうに「ないもの」とされた存在を相手にする部隊があるとは思わなかったからだ。
そんな由宇の心の内を読んだかのように、加賀美は首をすくめてみせた。
「まあ、この部隊のことは軍の中でも幹部級の人間しか知らないのだがね。流石に表立って妖だの何だのと言えば、世間からの目がきついと判断したのだろう」
「確かに、それはそうでしょうね。特に上層部は頭の固い方々ばかりだから、曖昧なものは受け入れられないんでしょう」
加賀美の説明に、遠田が深く頷いて賛同する。しかしその後に続いた言葉はあまりにも皮肉というか嫌味が込められていて、辛辣な物言いに朝比奈や笠原は顔を引きつらせた。
「遠田。口が過ぎるぞ」
「おっと。失礼しました」
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