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学校を出たのは18時半過ぎだった。
閉館ギリギリまで勉強していたら遅くなってしまった。
道に沿って綺麗に整列するマンション達。
キラキラと電気にに照らされるそれの間から
半月がくっきりと出ていた。
暗くなるのが早く、あたりはもう真っ暗で街灯がついている。
真っ白い吐息が立ち上る。
耳に流れるのはleapの音楽。
半年前まで、leapと一緒に過ごしていた時間がずっと昔に感じてしまう。
歩きながらつい、携帯のメッセージを確認してしまう。
今日は何回確認しただろう。
今のleapと私は、トップアイドルと一般人。
leapと離れる時に、チチに連絡先を全部消されてしまった。
もう、私から連絡する術はない。
ただ、leapからの連絡を待つだけ。
leapに会いたい。
日常が戻ってきたはずなのに、凄く毎日寂しい。
leapの音楽を聞けば、その寂しさが埋っていく気がして。
手袋もしてなくてキンキンに冷えた手先を、吐息で温める。
私はマンションのエントランスをくぐる。
タイルの床も、ガラスの自動ドアもいつ見てもピカピカだ。
エントランスの端には待合室が設置されており、その物陰から雑巾をもった50代ぐらいの女性、長谷川さんが現れた。
「あら。智有ちゃんおかえり。」
髪の毛をお団子に束ね、割烹着という独特なスタイルで長谷川さんは豪快に笑った。
「ただいま。長谷川さん、今日遅いですね。」
「そうなのよ。水漏れがあって対応してたら色々終わらなくてね。ちょっと掃除できてない所があるからやってるのよぉ。」
長谷川さんは私が越してくる随分前からマンションの管理人をしている。
元気いっぱいの痛快なキャラクターのお陰で、マンションの住人達に人気な管理人さんだ。
私は少し長谷川さんと喋った後、エレベーターに乗り込んだ。
横のモニターに映る、マンションの階数の数字ががジワジワと変化していく。
私は静かにモニターを見つめる。
手先が随分と冷えている。私は剥き出しの手を擦り合わせて息を吐く。やはり2月の夜は随分冷える。
手袋、買おうかなぁ。
エレベーターが止まった。10階。
降りて、電気に煌々と照らされる廊下を歩く。
同じ扉が等間隔に並んでいる。
私は、端から2番目の玄関の扉を開けた。
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