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「……あら、新入生? 3年の教室に何か用?」
放課後、3年の教室があるフロアに行くと、今朝見た彼女とはまた違った系統のキラキラした女子の先輩に声をかけられる。
「いや、あの、たぶんゆあという方に呼び出されて」
「あぁ、そうなの? 彼女ならあそこの教室にいると思うよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「どういたしまして。ばいばい。またね」
「はぁ、さようなら」
優しい先輩がいなくなるのを見届け、おれは意を決して教室に入った。
「……やあ、少年。待っていたよ」
「なんですか。用があるなら手短にお願いしま」
「朝、きみと会った桜並木で、きみの歌声を聴かせてくれるだろうか」
「歌?」
いやですよ。歌なんてカラオケでさえ人前で歌わないし、そもそも不特定多数の通行人が見るようなところでなんて恥ずかしい。
そう言いたかったけれど、それが叶わず、おれは例の場所へ連れていかれた。
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