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おれがなにしたって言うんだ。
悪いことなんてなにひとつしてないのに。
「すばらしいよ。最高だ、少年。わたしが求める声はもはや幻なのだろうかと諦めていたのに……今すぐきみが欲しい」
「はぁ?」
「きみの カラダ、わたしに貸してくれないか」
「……」
ちょっと待って。
なにを言ってるのこのひと。
まさかの良い方に捉えられていたのにはホッとしたが、その周囲に誤解を招くような物言い……非常にやめてほしい。
「ちょっと、ゆあ。言葉をもっと選んでから言いなさいよ」
「あ、あぁ」
「もう。ごめんね少年くん。この子の言ってることを意訳すると、少年くんの歌声が、理想すぎたから、わたしたちが組んでるバンドのメンバーになってほしいの」
「……え、無理です」
「まぁそう言わずに。恥ずかしいという壁を超えたら、もらえた歓声や拍手に快感を覚えたでしょ? もっとその先を目指してみたいなって思わない?」
あぁ、きっとメイさんは、そんなふうに言われて、このひとに口説かれたんだ。
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