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「……は?」
「というわけでお前のペアを紹介する! お前と苦楽を共にする相棒の野中だ!!」
「よろしくね、柚希ちゃん」
「いやいやいやいや、意味わからんわ!」
橋場の強行突破な姿勢が理解できず、困惑する。
そして橋場に手招きをされ、のんきに歩いてきた“相棒”の野中も意味不明である。
野中 真綾、同学年でバドミントン歴は長い。
ボブ頭のくせ毛なほわほわした見た目の女の子だ。
先輩や同学年とも関係良好で、それでいてそれなりに実力もある。
気の強い柚希とは真逆のおっとり系だった。
「この子、シングルスで十分強いじゃん! ……私には劣るけど」
「その見下したとこだぞぉ」
顎に手をあて、頷きだす橋場。
「柚希と真綾。うん、よく似ている。ダブルスにはバッチリだな」
「一つも似てないわ。……最悪な雑さ」
橋場の対応に反吐が出る思いだった。
「……どうせ先輩の優遇でしょ」
「柚希ちゃん……」
心配そうにこちらに手を伸ばしてくる真綾の手を振り払う。
鋭く尖った目つきで橋場を睨みつけた。
「シングルスだと枠がないから出してもらえない」
柚希は実力が上でも先輩が優先される環境で、なかなかトップチームに入ることが出来なかった。
一年生だからと選抜チームに選ばれなかった。
シングルスで先輩に勝っても、総合的判断として選ばれない。
ダブルスが組めない致命傷があるからだ。
中学バドミントンの団体戦はダブルス2組、シングルス1名の計5名で行われる。
つまりシングルスでの選抜枠は1つしかない。
団体戦の枠は固定ではなく、試合によってシングルスとダブルスの入れ替えも可能だ。
どれだけシングルスで強くても、ダブルスが出来ない柚希は選ばれなかった。
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