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強さを誇る柚希からすると、それはプライドをズタズタにされるようなものだった。
「ダブルスという立ち位置と、最後の大会と建前振りかざして私を排除しようとする。私より弱いのにダブルスで枠をとる」
「高崎っ!!」
「ダブルスなんてやるもんか! 私は一人でも強いですから! 先輩たちがシングルスの道を邪魔するなら実力で倒しますんで!!」
悔しさに吠え、柚希は背を向け走り出す。
***
毎日走って筋トレして素振りをする。
縄跳びを何技も繰り返して、また走る。
壁に向かってひたすら打ち続け、落とさないように足腰を鍛えていく……そんな毎日。
中学という場所は先輩後輩に厳しい。
特にこの学校のバドミントン部はそれが顕著なようだ。
先輩がいる限り、ほとんどコートに立たせてもらえない。
それでも柚希は勝利した。
先輩たちが引退すれば怖いものなんてない。
(コートに立ちたい)
シングルスの試合は純粋だ。
そして団体戦は出してもらえなくても、個人戦は完全実力だ。
一年生の時に参加した新人大会では全国大会目前までの結果は出せた。
シングルスとしての実力はうなぎ登りであり、次は全国大会で戦っていけるだろう。
だが柚希は中学バドミントンという場に立つ以上、団体戦で勝利してみたいという捨てられない夢があった。
団体戦ならばシングルスの柚希でもみんなと同じ喜びを味わえるのではないか。
……そんな“柚希らしくもない夢”を抱いていた。
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