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第1セット「ソップー!!(ストップ)」
『バドミントン』
それはシングルスとダブルスで生き残り方が異なるスポーツ。
「お前、もう少し協調性を持てないのか?」
「私はシングルスです。一人で十分強いです」
体育館に乾いた弾ける音が響き渡る。
バドミントンの球、シャトルを打つ音だ。
木目を擦るキュッとした足音と混じり、その忙しなく続く激しい動きは鷹のように鋭い。
中学二年生の高崎 柚希は幼い頃よりバドミントンをプレイしてきた実力者である。
はじめてパァンと弾ける音を出してシャトルを飛ばすことが出来たとき、柚希はその快感にのまれた。
それから努力を続けてきたわけだが、柚希には一つ、大きな欠点があった。
「事実、私は部活内で強い。先輩ももうすぐ引退。つまり……私は最強」
「ボケてもツッコミ役不在」
ニヤリと口角を不気味にあげながら『最強』を名乗る柚希。
顧問の橋場は深くため息をつき、頭を抱えた。
柚希は勝気な性格をしており、我が強い。
バドミントンには一対一で戦うシングルスと、二対二で戦うダブルスがある。
しかし柚希は強すぎる我の強さにより、ダブルスが出来なかった。
誰と組もうと衝突がおこり、破綻する。
シングルスでは絶対的な強さを誇るが、ダブルスになると途端に悲惨な戦い方をするのであった。
「先生はこの先の高崎が心配だよ」
「心配不要ですちゃんと結果を出します。必ず全国大会に行きますから」
「オレは心配だ。心配すぎて頭がおかしくなった」
一体コイツは何を心配しているのだろうと、柚希は首を傾げる。
「そこでオレは荒療治をすることにした。お前、今日からダブルスへ転向!!」
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