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月のこども7
それでもノリちゃんには蝶々の話しは無意味でしかなくて、何もかもが楽しくなくて、イライラしたようだった。
それは全て、ミイちゃんが悪いのだと言い出した。
「しね!しね!しね!」
ツマベニチョウの話を最後まで聞くことは出来なかった。
ガリガリと、ミイちゃんが自分の顔に爪を立てて、まぶたの上から頬までを何度も何度も引っ掻きはじめたのだ。
いつもだったならば、ミイちゃんは2、3分話すと満足をして口を閉じ、何事もなかったかのように黙々と決められた作業に戻る。
今までは、自傷行為をしたところなど見たことがなかったので、私は驚いてノリちゃんを離すと、ミイちゃんの元へ急いだ。
すでに、「パズル」の授業の先生である真由理先生が、ミイちゃんの腕を掴んで自傷を止めさせ、涙を拭っていた。
ミイちゃんは、ずっとずっと泣いていた。
それでも、他の子達から「学ぶ時間」を奪うわけにはいかないので、真由理先生は授業を続けることを選ぶ。
私に、ミイちゃんの傷の具合いを良く診てあげて欲しいと頼むと、爆笑しているノリちゃんのことを一瞬だけつらそうな目で見つめていた。
でも、私がミイちゃんにかかりきりになれば、ノリちゃんを飽きさせないように構う相手がいなくなってしまう。
だからと言って、ミイちゃんの自傷痕を放っておくわけにはいかない。
ノリちゃんは、習い事の時間が終了するまで、ずっと「ばか!」「しね!」「だるい!」「帰る!」「ひまー!」と、床を転がっていた。
※3「自傷行為」⏩自分で自分の体を傷つける行為。心を傷つける場合をさすこともある。
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