1章 第15話 出発準備完了

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1章 第15話 出発準備完了

1章 懐中時計 Montre de Poche  私は「時の加護者」アカネ。  昨夜、宿にて「秩序の加護者」トバリの絶望と「時の加護者」アカネの失踪についてシエラが話してくれた。正直、あまりにも世界が違いすぎる話になかなか受け止めるのが難しかった。ただ、シエラの言う「時の加護者」アカネとはやっぱり私のおばあちゃんだった。とりあえず、明日は服屋さんに行こう。私の制服目立ちすぎだから.. —ビーシリー 宿—  昨夜もそうだったが、この世界の料理は魚類と野菜が主な材料となっているようだ。どの料理にも肉らしいものがなかった。まぁ、それは元の世界でも宗教によってはそういうのがあるので問題はない。私が言いたいのは、この世界のパンが超絶に美味しいということだ。  このパンのおいしさに比べたら高級生食パンが家庭科の授業で作ったパンと思ってしまうくらいだ。そんなパンを食べすぎてしまい、今、動くのがつらい。  「だから言ったのに~。食べすぎですよって。それにわかってますか? 今日、アカネ様の服を買いに行くんですよ」  そうなのだ。すっかりそのことを忘れていた。  「あのさ、明日にしない? 」  「だめですよ。買い物したらさっさと『レギューラの丘』へ向かうんですから」  「でもさ、朝早いからまだお店開いてないんじゃない? 」  「大丈夫ですよ。ビーシリーの街は早起きの民として有名なんですから 」  「そ、そうなんだ.. 」 *** —ビーシリー ランプ通り商店街—  「あった、あった。アカネ様、ここですよ。服屋さん」  『素材と仕立てと服の店』という名の店だ。ストレートな店の名前だ  『なぁ、なぁ、いいじゃんかぁ、おっちゃん』  隣の『本や地図または案内承ります店』から元気な男の子の声がした。  「おまえら最初から買い物する気ないだろ? さっきから立ち読みばかりしやがって」  『なんだよ。ケチんぼ。もうここに来ても買い物してやんないぞ』  『おにーちゃん。あった。あった。もう覚えた! ばっちりだよ』  「こんにゃろー! また地図なんか立ち読みしやがって、でていけっ! 」  『べー だ! もう覚えちゃったもんね』  『よし、じゃ、帰って準備しよう! 』  去り際にわんぱく2人の白い手袋をつけた女の子が手を振るので、振りかえした。  ほんとうだ。この街はみんな朝から元気だなぁ。  本屋の親父とわんぱく兄妹か。  こういう光景って本当の意味で世界共通なんだなぁ..としみじみ思ってしまう。  「アカネさまー! 何やってるんですか? 早く服 選びましょうよ」  『素材と仕立てと服の店』に入ると、さすが大正ロマン風な街だけあって、中には和服のような上着や小物、そして素材となる布が売られていた。  特にこの匂い袋..おばあちゃんがいつも身に着けていたものと同じ香りがする。懐かしいなぁ..  シエラはダボダボなベージュのズボンに自分の体を2回ほど包むことが出来るブラウンの生地を購入。  私はとりあえずブレザーの代わりになる藍色の生地でつくられた可愛らしい羽織のような上着をえらんだ。  店主は、きちんと体に合わせて仕立てると引き留めたけど時間がないので飾ってある見本品を購入。その代わりしっかり割り引いてもらった。  「これで少しは目立たなくなりそうね。ところでシエラは生地だけでいいの? 」  「アカネ様、僕はこれで大丈夫です。動きやすいように加工しますから。それよりも..アカネ様、本当に下はそのままでいいんですか? そのヒラヒラのままで? 」  「え? スカートは別にこの世界でも目立たないでしょ? 」  「まぁ、アカネ様がそれで良いならよろしいのですが.. 」  シエラは食材屋に行くとグラム宮殿から盗み取った宝をカウンターにポンポンと4つほど置いた。そして、レギューラの丘へ3日間の食材を毎日運んでもらう約束をしたのだ。  店主は手もみをしながら私たちを見送った。どうやら家を一軒買えるほどのお宝を与えたらしい。そりゃ、手もみもするよね。  私たちが牧草地に行くと既にラインとソックスが馬車を曳く準備を終え、足慣らしをしている。  フコフコと鼻で甘えて来るソックス。ラインはやる気満々に後ろ足を跳ね上げている。  「ねぇ、シエラ、この子たちレギューラの丘って場所は知ってるのかな? 」  「ああ、大丈夫でしょ? 覚えたみたいですよ」  「へぇ..そうなんだ」  馬車はラインとソックスの特徴色からホワイト号と名付けた。ホワイト号は荷物を積み込んで、レギューラの丘へ出発する準備を整えた。
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