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1章 第18話 繋がれた世界
1章 懐中時計 Montre de Poche
私は「時の加護者」アカネ。
「時の社」に出現した「喫茶店真天珈(まてんか)」から見える現世の景色を見たシエラ。彼女の反応に違和感を覚え、私は「あなた、あちらの世界を知っているわね?」と質問した。シエラは平然と『あちらの世界』を知っていると言ったのだ。
—時の空間 時の社—
「どういうことなの? 」
「まずはアカネ様には少しショックな話かもしれません」
この言葉を聞いた時点で『もう耳をふさいじゃおうかな』って思った。
「アカネ様が住んでいた世界。あの世界は『時の加護者』アカネ様、『運命の加護者』シャーレ様、『秩序の加護者』トバリ様が作った世界なのです」
「え? なに? 何かの映画であった仮想現実ってやつ? 」
「仮想? いえいえ? そういうものではなくて事実、存在している世界です。つまりこの世界と同じ世界をもう一つ作ったと思ってください」
パラレルワールドのようなものかしら?
「この世界はいわば神が無責任にも3人の加護者に投げた世界なんです。そこで3人は時間と運命と秩序の力を凝縮し、もうひとつの世界を作り、人間が辿る道の可能性を測りながら、この世界の舵取りをしようと考えたのです」
「私がいた世界はこの世界の兄妹みたいなものなの? 」
「いえ、もっと近い存在と言っても過言ではないです。時の力で時間を共有し、運命の力で魂をも共有しているのです」
「秩序は? 」
「 ..秩序は何も共有してません」
「アカネ様のお友達が狙われる理由はここにあるのですよ」
「杏美ちゃんのこと? 」
「元の民が『時の狭間』で杏美ちゃんを狙うのは、この世界で魂を共有する人物を殺害するためなのです。僕たち加護者を守護する者はこの世界ではトパーズと呼ばれています。トバリ様とアカネ様がこの世界から姿を消した後も僕らは弱くなりながらも少しの間、動くことが出来ました。石像になるまでの間、僕らはヨミのやったことを見てきました」
また難しい話になりそうなので、カバンからノートを取り出しメモをすることにした。
「はい、気にせずどうぞ、続きを説明して」
「 ..ヨミはアカネ様の補佐をする者としてアカネ様に次ぐ力を持たされていました。彼女はアカネ様とトバリ様が居なくなり、この世界をどうすれば良いのか悩んでいました。しかし、彼女は一番力を持つ者が自分だと気が付いたのです。彼女は各王国を従属させて自分の思い通りに動かそうと考えました。そして要人の暗殺を行ったのです。国内は疑心暗鬼に陥り、優秀な人間がいなくなれば国力も弱くなります。それがヨミの狙い。ヨミは『時の狭間』を暗殺に利用するため、自分を崇拝する『元の民』がその空間で活動できるように道具を分け与えました」
「はい、はーい! それってブロンズの懐中時計でしょ? 」
「そう、正解!! あれは時の加護者がもつ懐中時計の模造品です。しかし所詮、ヨミが作った偽物なので『元の民』が狭間にいることができる時間は秒針が一周まわる程度です」
「それを超えたらどうなるの? 」
「そうですね ..時間の圧縮比の影響で急激に年を取るか身体が崩壊しますね」
「さっきの蝶の現象のようなものなの? 」
「もっと最悪です。ここは安定した圧縮比ですが、『時の狭間』は捻じれ空間の為にとても不安定なのです。どうなるか予測不能です」
「 ..ヨミはその『時の狭間』で暗殺を行っている? ..すると杏美ちゃんはこの世界の要人ってこと? ねぇ、私の世界の人が死ぬとどうなるの? 」
「魂で繋がれた人物が片方の世界で死を迎えると、もう片方の世界でも事故などで死んでしまいます」
「とんでもないわね」
「そうです。とんでもないことなのです。アカネ様、ここでの用事が終わり次第、王国フェルナンに向かいましょう」
「そこに何があるの? 」
「運命の祠(ほこら)です。そこに『運命の加護者』シャーレ様がおられます」
「じゃ、さっそく..」
「ダメです。その前にアカネ様にはやっていただくことがあります」
何か嫌な予感がしてならない..
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