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1章 第23話 守るものの為
1章 懐中時計 Montre de Poche
私は「時の加護者」アカネ。
月明かりの夜、グレイブのロウゼと小悪党のルキ&ジキが闘いを挑んできた。
ロウゼの提案どおり、まずはアコウとジキの闘いが行われた。しかし、闘いは開始の合図と同時にジキが吹っ飛んでアコウの勝利に終わった。
—レギューラの丘—
「な、何が起きたんだ! 」
一瞬で勝負がついた。この予想外の展開にルキがたじろいでいる。
「ほう、これはとんだ番狂わせだ。本当に驚いた」
ロウゼはそうつぶやくと暫く目をつぶって考えていた。
「さぁ、次は私とそっちのルキという男ね。やってやるわ! 」
アコウに続けと私も俄然やる気が出てきた!
「ちょっと待ってくれ」
目を開けたロウゼが言った。
「何よ? もしかしてあんたが私の相手をするの? 」
「まぁ、お嬢さん、さっきは俺が待ってあげたんだから、ちょっとだけ待ってくれ」
そういうとロウゼは長いグレイブを握ると力強く2,3度振った。
「アカネ様、あいつはかなり強いです。あれはガゼ以上です。僕の後ろに下がっていてください」
ロウゼのグレイブを振る手が次第に早くなると、頭上での回転を始めた。そしてグレイブを両腕でしっかり掴むと渾身の力を腕に宿らせて大きく振るった。
—バガァン!
その音と共に、なんと自分の味方のルキの身体を真っ二つに両断した!
「え、なに? 」
「はい。あいつ、グレイブの音速超えで、さらに真空の刃でルキを両断しました」
シエラが淡々と解説してくれた。でもそういうことではない!
「あなた! どういうことなの? 」
「いやね、真打前の前座の坊ちゃんからして、その強さじゃ、とてもじゃないが太刀打ちできない。ルキを叩き切ったからチャラにしてくれ。俺は遠くに逃げるとするわ」
「嘘だ。お前は最初からそうするつもりだっただろう」
ロウゼはシエラを鋭い眼光で睨んだ。
「まぁ、とにかく俺は逃げる。兄は誇りを守り抜いて闘った。だが俺には他に守るものがある。死ぬわけにはいかないのだ。ヨミ様やミゼには俺をチリにしたとでも言ってくれ」
そういうとシューの背中にまたがった。そして振り向きざまに『ミゼは俺たちとは違う。表が表とは限らない』と言い残すと闇夜の中に走り消えた。
「どういうことだろ? なぜロウゼはヨミを裏切って逃げたの? 」
「さぁ? わかりませんが、奴には奴なりの理由がありそうです。それよりも奴が裏切りを決めて良かったです。僕はアカネ様を守る使命がある限り負けることはありませんが、もし乱戦になっていれば、アコウは死んでいたでしょう。そしてかなり苦戦したはずです」
「まっ、とりあえず、目の前の敵を排除したってことだろう? 俺はジキの野郎に仕返しできたし、『デザート』ってやつを作ってあるから、それでも食べないか? 」
そう提案するアコウに反対する者はいなかった。
だが、誰も気が付いていなかった。そこに一部始終を監視していたミゼの目があったことに。
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