Storyは進化する(文学年表) 第四部

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Storyは進化する(文学年表) 第四部

1951 『時の娘』 ジョセフィン・テイ 『史上最高の推理小説100冊』第一位 イギリス 1951 『全体主義の起源』 ハンナ・アーレント 自らも経験した全体主義についての研究。ドイツ 1951 『ライ麦畑で捕まえて』 J・D・サリンジャー 青春文学の古典。管理社会の欺瞞を若者たちの視点から描いてベストセラーになった。2000年代に入っても売れ続けている。日本の現代作家にも影響を与えた。 アメリカ 1952 『ゴドーを待ちながら』 サミュエル・ベケット  視力を失った、ジョイスの仕事を手伝っていた。多くの作品をフランス語で執筆。自己矛盾に満ちた不条理演劇であり、無数の解釈を内包している。論理の脈絡やストーリーの因果関係すら否定している。 アイルランド 1952 『老人と海』 アーネスト・ヘミングウェイ 失われた世代のひとり。ハードボイルスタイルの先駆者。幼い頃にできたトラウマを乗り越えるために、「男の人生とは相手を征服すること、そして、戦うこと」だと思い違いする。スペイン内戦や第一次世界大戦に参戦している。評価されたのは長編の戦争小説だが、男女関係を描いた短編作品に優れたプロットがある。『戦い』と『喪失』 アメリカ 1953 『消しゴム』ロブ=グリエ  ヌーヴォー・ロマン。人間外の視点。芥川作品を真似て、映画脚本を書いた。芸術派の代表格。 フランス 1953 『長いお別れ』 レイモンド・チャンドラー  ハードボイルド小説。脚本家。切れ味と長い倦怠感の連続。洒落た文章表現。ヘミングウェイやサマセット・モームから文体を学んだ。 アメリカ 1953 『南から来た男』 ロアルド・ダール 「奇妙な味」と評される恐怖を描く。映画監督宮崎駿氏に影響を与える。イギリス 1953 『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ SF、幻想小説。本の所持や読書が禁じられた、架空の社会における人間模様を描いた作品。書物(読書)という概念を殺した、文明社会への復讐。 アメリカ 1954 『悲しみよこんにちは』 フランソワーズ・サガン 中流階級の生活の描写。18歳で執筆。ジャン=ポール・サルトルと交流が深く、作品には実存主義の影響が見られる。『失われた時を求めて』の登場人物の名前の響きから、ペンネームを思い立った。 フランス 1954 『指輪物語』 J・R・R・トールキン 完全なる架空の神話体系を創造。後の小説や映画に多大な影響を及ぼした。ファンタジー小説の革新。三部作はすべて世界史上のベストセラーとなっており、それぞれ一億部の売り上げを達成している。 イギリス 1955 『ロリータ』 ウラジーミル・ナボコフ ロリコンという単語。言葉遊び。 ロシア 1958 『ティファニーで朝食を』 トルーマン・カポーティ 現実の出来事に小説的な技法を用いて、一つの融合的な産物を世に送り出している。映画においては、オードリー・ヘップバーンが主演を勤めたことでも知られる。 アメリカ 1959 『サイコ』 ロバート・ブロック ガストン=ルルーやラヴクラフトの強い影響がみられ、コズミックホラーを取り入れたホラー小説の系譜である。著者は神話的作品や犯罪小説も手がけている。 アメリカ 1960 『走れウサギ』 ジョン・アップダイク 都会的で知的な作風。アメリカ三大文学賞受賞。アメリカ 1961 『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム SF界における20世紀の代表作 ポーランド 1962 『野生の思考』レヴィ=ストロース  構造主義 ベルギー 1966 『言葉と物』フーコー フランス 1967 『百年の孤独』 ガルシア・マルケス  幼少期に母親から聴かされた、無数の民話の融合。蜃気楼の街を巡る物語。フォークナーを尊敬しており、カフカの技法からこの物語を描くことを思い立った。 コロンビア 1969 『スローターハウス5』 カート・ヴォネガット 著者自身が目撃した戦争体験をもとに、時間と空間、人間関係を結び付けていくSF小説。作者は『プレイヤー・ピアノ』というディストピア小説を処女作として書いている。 アメリカ 1971 『零度のエクリチュール』ロラン・バルト フランス 1972 『見えない都市』 イタロ・カルヴィーノ  ムッソリーニの政権下に幼少期を過ごしたが、反ファシズムの思想を持つに至る。寓話的、幻想的な作風で名を馳せる。ポストモダニズム。「文学の魔術師」 イタリア(キューバ生) 1973 『重力の虹』 トマス・ピンチョン 多数のストーリーと百科全書的な知識が織り込まれている。無数の情報を錯綜させる書き手。覆面作家。コーネル大学英文科在学時に、ウラジーミル・ナボコフの授業を受けていたとされる。 アメリカ 1973 『モモ』 ミヒャエル・エンデ 著者の父親はシュールレアリスム画家のエドガー・エンデ。本作は児童文学であり、SFファンタジー。後に映画化され、各国で配給された。ただ、思想やイデオロギーを無理に塗り込めたため、ストーリーの理解が遠くなってしまったという批評も多く聞かれる。世界各国で翻訳されているが、特に日本で人気があることで知られる。 ドイツ 1973 『真夜中は別の顔』 シドニィ・シェルダン ブロードウェイの劇作家として活躍。映画化された作品は少なく、テレビドラマ化された作品が非常に多い。 アメリカ 1978 『ガープの世界』 ジョン・アーヴィング ポスト・モダン文学を否定して、19世紀に隆盛を誇った、いわゆるストーリー文学の復権を目指している。ディケンズを尊敬しており、少なからず影響を受けている。 アメリカ 1980 『薔薇の名前』 ウンベルト・エーコ 記号論、聖書分析。ハイパーテキスト。メタテキスト。 イタリア 1982 『シンドラーズ・リスト』 トマス・キニーリー ホロコーストを描く小説の代表作。オーストラリア 1984 『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ プラハの春を題材にした恋愛小説。男性の傲慢と女性の脆弱さを哲学的に表現した。 チェコ 1987 『密林の語り部』 バルガス・リョサ ペルー 1988 『羊たちの沈黙』 トーマス・ハリス きわめて猟奇的な犯罪を扱ったサスペンス小説。著作にはサイコ系の殺害事件がしばしば登場する。著者は通信社での勤務体験があり、作品に強い影響を与えていると思われる。 アメリカ 1994 『パルプ』 チャールズ・ブコウスキー 大衆雑誌・悪文へのオマージュ アメリカ 1997 『ハリー・ポッターと賢者の石』 J・K・ローリング イギリスで売り出された初版は五百部のみであった。アメリカのオークションで人気に火が付き、世界中で大ヒットする。シリーズ作品としては、世界一位の記録を持っている。 イギリス 1998 『めぐりあう時間たち』 マイケル・カニンガム ひとつのテーマの複合的時間枠の再統一。アメリカ 1998 『アムステルダム』 イアン・マキューアン 同作品で英ブッカー賞を受賞する。この作品以外の三作品でブッカー賞の最終選考に入っている。社交界に名を馳せる一人の女性の早世により、多くの著名人が破滅していくさまを描く。19世紀以降に生まれ、急速に発達したマスメディアによる取材姿勢への痛烈な皮肉にもなっている。社会に蔓延る現実的な問題を世に知らしめるべく筆を取る姿勢を貫いている。 イギリス 2003 『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ インド系移民の生活を中心としたStory インド系アメリカ 2006 『最後の恋人』 残雪(ツァン シュエ) 幼い頃から、当局による思想弾圧を受けていた。幻想と悪夢に満ちた文学。作品には孤独や疎外感が埋め込まれている。フランツ・カフカへの強い傾倒がみられる。 中国 2009 『火星の人』 アンディ・ウィアー 多くのソフトウェア会社を遍歴するプログラマーであった。同年からWeb小説として発表していた本作品を読者の要望により最低価格の99セントにてデータ販売化する。後に『オディッセイ』として大々的に映画化されることになる。インターネット小説の時代へ。 アメリカ
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