満開の桜の下にはシトリン

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 私、狼みたいだ。自己中心的で周りのことは考えられない。しかも、狼が弱い動物を襲うように、私は上手く意見が言えない晴美(はるみ)をいいことに自分の意見ばっかり通してしまった。そんなの一匹狼になるよ。だから、桜みたいになれないんだ。いつも長所を褒めずに、嫉妬する。そんなの桜みたいに優しい花は咲かせられない。自分は汚ったない花を咲かせるんだ。それに比べて晴美(はるみ)は桜みたいな子だ。いつも周りに人がいるし、優しくて心が綺麗。彼女のような人はそういう花を咲かすことが出来るんだろう。  自分は相手の優しさを当然のように思っていた。優しくするということは勇気のいることで、簡単に出来ることではない。晴美(はるみ)はどんな思いだったんだろう。私のようなお礼も何も言わない人を相手にしているとその行動をしたくなくなる。自分がその立場だったら腹に据えかねると思う。逆に冷然としていると、周りからは冷たい人と思われる。こんなの悲痛すぎるし、相手の心を殺しているようなものだ。絶対に恩は忘れてはいけなかったのに…、私は。だから、晴美(はるみ)は喧嘩した後その怒りの勢いに任せて、私を押したんだろう。  もう一度……元に戻れたらいいのに……。今更しても意味のない後悔を私はする。取り返しのつかないことをしてしまった。喧嘩別れするなんて……嫌だよ。神様…あの時に戻してください……私はどうなったっていいから……せめて、晴美(はるみ)だけでも私を忘れて幸せに生きてくれるようにしてください。  そう願った後、視界がぐらついてー
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