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満開の桜の下にはシトリン
春の訪れを私に知らせるのはいつもこの桜並木
だった。毎年変わらずにここを老若男女の多勢の人達が秀麗な薄桃色の花弁の絨毯を進んでいる。
幼い頃からこの場所でよく集まり、遊んでいた私ももう高校生になる。きっと普通はこの桜を見て「もう高校生か」とか思って微笑んだりするんだろうけど、私は違う。逆に苦笑いしているだろう。「何故桜はこんなにも人の目を引けるのだろうか。桜なんて無くなればいいのに」そう思ったのは一度や二度ではない。春が来ると毎年そう悪態をつくのがもはや日課になっている。だって春になったら皆桜、桜うるさいじゃん。でも、何故かそれを見ないわけにもいかなくなる自分にも腹が立つんだよな。それくらい春の名物には天下一品なんだろうけど。 それに比べて私は真逆で、桜みたいに人が寄って集って来ることもないし、友達も少ない。だから桜のような人にはなれないと言われているようで嫌いだった。私も桜みたいに人気者になれたらなー。
そう思っていると「ねぇ」という話し掛ける声が聞こえ、振り返るとそこには女の子がいた。何故か少し戸惑うような様子だったが、「どうしたの?」と聞いてみると安心したような顔で「笑ちゃんだよね?ここで何しているのかなと思って」と言った。
「え?ああ、友達を待ってるの。今日、桜を見ようって約束したから。」
「友達って晴美ちゃんのこと?」
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