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春が好きになれなくてもいいですか
カイドウの花に目を奪われつくしゃみをひとつするかへりみち
金銀の荒波超えて春の日を寿ぐ父母の羨ましさや
化け猫に噛み潰される夢を見てちゃんと謝る練習をした
皮膚を喰む首輪を自慢しあってはどちらがマシかと比べてもいる
黒く硬いダブルクリップ外したら心も書類も散らばるかしら
シュレッダーで粉砕された履歴ごと私はなかったことにされてく
子供よりスマホ大事と思ふかと訊きたい口をそっとおさえて
引き継ぎを雑にしようと企てたあいつも今じゃ行方知らずに
ひとまわり小さくなったかき揚げで晩酌をする父と私と
先端が曲がったレコード針は歪んだ音しか拾い上げない
車窓にもケチをつけだすくちびるは汚い糸で縫い付けようか
いつまでも散らない花はつまらんと呟く祖父は桜色のまま
抱き枕じゃ眠れぬ夜もあるなんて生意気なこと言うんじゃないよ
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