聖夜もなにも知らぬ存ぜぬ

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聖夜もなにも知らぬ存ぜぬ

 笑い者にしたけりゃどうぞご自由にそれしかできない身の上でしょう  肩ぶつけ憂さを晴らした日はいつも寒さが痛く刺しこんでくる  言い訳に「普通」と「みんな」を使うことルール違反にすればいいのに  酩酊し横臥す路の冷ややかな肌に叱られつぶやく「ゴメン」  懐メロの特番を見る父の眼があの頃みたいと母が揶揄う  弾き語りしていた歌をスマホから聴きたい朝は未だ仄暗い  モヒートを飲んだ翌朝二度寝して猛暑日の夢ばかり見ている  咳こんでなおむき出しでいる口元にひしひし迫るウイルスのカゲ  越冬す蝶々の如く布団から出られなくなる西高東低  いとこ煮は飯のおかずにならんと言い乍らこっそり箸を伸ばす父の手
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