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無理やり入部させられたものの、始めてみれば演奏するのは面白かった。
僕は昴を避けて先輩達のバンドに入り、無事縁の下の力持ち的ポジションのベースに辿り着く。
入部のタイミングで回った楽器店で見つけたフェンダーのJB75は少し高額だったが、完全なる一目惚れを理由にコツコツ貯めていたお小遣いを叩いて購入した代物である。
それから僕は毎日のめり込むように練習し、教わりながらではあっても作詞も作曲にも熱を上げた。
僕が入ったバンドは当時の3年生のギター・林先輩と2年生のドラム・岡部先輩、そしてベースの僕で作られたスリーピースバンド。
林先輩はよく喋る人で、いかにもフロントマンといった感じではあるものの、実のところ面倒見が良くて頼れる先輩だった。
それに対して岡部先輩は寡黙で、キッチリとした性格がドラムのビートにも現れている。自分にも人にも厳しいが、メンバーの事をよく見ていて、いざという時は助けてくれる。
僕を昴のオマケのように扱わず、ちゃんと1人の人間として向き合ってくれた。
僕はそんな先輩達が大好きだし、その空気感も心地良かった。
しかし──そんな安寧の日々も当たり前のように長くは続かない。
夏休みが終わると、3年生は本格的に受験モードに入り、部活を卒業する。
林先輩の居なくなった僕たちのバンドは、どこかとくっつかなくてはならなかった。
「螢!一緒にやろ?」
そうこの声。
僕が一番避けていた展開。
よりによって昴はギターだった。
「……」
暫しの沈黙の後、顧問がさも当たり前のように「んー……じゃあ、そこは決定な」と手を叩く。
満足げな昴と、表情の無い僕。
2人を交互に見比べた岡部先輩は、何も言わずに僕の肩に手を置いてくれた。
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