ジョセフィーヌは生まれない

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 *** 「ふむ、興味深い」  血に染まる白いキッチン。カメラで映像を見ていた男たちは言う。 「やはり、あの卵の異常性は明確です。彼女は五人目の被験者だったわけですが……卵に触れると、あれを孵すためにありとあらゆる手段を講じようとするようですね。今の女性は、恐らく腹を切って、自らの内臓の中に卵を入れて温めようとしたのだと思います」 「ふうむ、予想できなくはありませんでしたが……女性だから性器の中に入れるのかと思っていましたが、違いましたねえ」 「前回の男性は卵を飲み込もうとして食道でつまってしまい、息ができなくなって死亡しましたね。本来ならば、絶対にやらないような行動を取ってしまう、と」 「それほどまでに、あの卵の中身は価値あるものなのかもしれません。一刻も早く解明が必要です。次の被験者を呼んで、さらなる実験をしましょう」 「そうですね。あれが宇宙人の卵なのか、未知なる生物の卵なのか、はたまた卵ではない何かなのか……ああ、研究のし甲斐があります」  ええ、ええ、本当に。  男たちは頷き合う。腸に卵を埋め込んで、今にも死にそうになっている映像の中の女を放置したまま。 「急いで次の手配をしましょう。なに、問題ありません。生きている価値がない人間など、この世の中には腐るほどおりますからねえ……」
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