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「お嬢さんはどうやってこの電車に乗りましたか?」
「部活が終わって家に帰ろうとしてました。そのまま電車内で寝かけて、鈴の音で目が覚めたときにはここにいました」
「じゃあ、お嬢さんは生きているんですね」
あすみは男性の言ったことが理解できなかった。
「生きていますよ? あなただって生きていらっしゃるでしょう?」
「僕はもう随分前に死んでます。……さっきひとかけの星を食べに行くと言いましたが、あれを食べると天国へ行けるんです。そこに行くのに迎えに来てくれる人──すなわち会いたい人にも会えるわけです。生きている人も鈴の音を聞くことが出来れば、この電車に乗ることが出来ます。お嬢さんはそれですね」
「では、今日はあなたは誰かを迎えに来たんですか?」
「……半分はそうですね。妻を迎えに来ました」
男性は笑う。あすみはもう半分の目的は何かと聞こうとしたが、男性は新聞を持って立ち上がった。
「そろそろ迎えに行かなくては。……月まで行かないように気をつけてくださいね」
「はい。ありがとうございました」
男性は貫通扉を開けて出ていった。
あすみは自分が会いたい人が誰なのか考えていた。亡くなってしまった人と言っていたことを思い出し、最近亡くなった祖母を思い浮かべていた。
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