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「そんな訳ない……あの人は、そんなこと望んでなくて」
「本来なら国宝を奪うつもりでお前をここに送ったんだ。あらぬ非礼だし、父が聞いたら激昂するだろうな」
頬に触れていたシャリーフの手を取り、サリーは懇願する。
「……それだけは、言わないでくれ。俺だけを処刑してくればそれですむだろ?」
強く握る手に、シャリーフが自分の手を重ねた。
「安心しろ。私もいらない心配を父にかけたくない。それに、あの薬。ちゃんと効いたようだ」
「は? こんなに早く効くわけが…」
「父の足は昔の傷が疼く程度だ。それでもたまに痛むから足を引きずることがあってな。足の悪い使用人にあの薬を飲ませたら、良くなったと報告があったから父に飲ませた。すると、あっという間に効いたようだ」
王の足の状態が切断寸前というのはシャリーフの嘘だったようだ。サリーが何者で、何を企んでいるのかを調べようと、軟禁する時間を長くするためだった。
サリーはしてやられた、と唇を噛んだ。シャリーフという男は自分よりもはるかに賢くて洞察力がある。それに引き換え自分は何も考えていないな、と項垂れているとシャリーフは手を強く握ってきた。
「それでも父は足の痛みに悩むことがなくなって感謝している。だから、『レッドクリスタル』の件は他言しないことを誓う」
サリーは思わず顔を上げるとシャリーフが微笑んでいた。
あ、ありがとうございますっ! 俺、なんて言ったらいいか」
シャリーフの言葉にサリーはポタポタと涙を流した。
「成り行きとはいえ、ナージたちと仕事もしてくれてたし、あいつらもお前と仲良くなっている。ナージも言葉にしないがかなりお前を気に入っているはずだ」
グスッとサリーは鼻を啜りながら、涙が止まらない。ここで暮らしているうちに、この国にこのままいられたら、なんて思ったのは一度や二度ではない。ナージたちと、そしてシャリーフの側に居たいと思っていた。
「それにな、サリー」
ぎし、とシャリーフがベッドに腰掛けてきた。甘い香りが強く香ってくらくらする。
「この白い肌を俺のものにしたい」
「……はっ?」
握っていた手を伸ばし、耳たぶに口付けるとサリーは思わず身震いした。
「ちょ……ひゃっ」
「反応が良すぎるこの体、どうなってるのか、試したい」
「何言って……」
ぐい、とサリーの体をベッドに押し倒し、自分の下に組み敷いた。シャリーフの黒い長髪が顔に当たり、その逞しい褐色の筋肉質の腕にサリーはドキっとした。
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