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3.二人の王子
サリーの頬をシャリーフは両手で包み込む。サリーが甘い香りを感じた瞬間、シャリーフの唇が自分の唇に重ねられた。
「ん…ぅ」
甘いのは香りだけではなかった。柔らかいキスはサリーを蕩けさせていく。シャリーフが何故自分に触れてくるのか、分からなくて半分パニックになっていたが啄むキスが情熱的なものに変わってくると思考はもうできなかった。
首筋から胸元へ、そして胸の突起、さらには少し膨らみかけたソレにまでキスをしていくシャリーフ。
「ちょっと!待って、どこまでするつもり?」
「サリーは私が嫌いか?」
「い、いやそんなことはないけど」
嫌いな相手ではない。むしろ…とサリーは心の中でつぶやく。
炎天下の中、桃を買おうとしたのはシャリーフが喜んでくれるかもとと思ったからだ。気がついたらシャリーフのことを考えていたし、姿を追っていた。
同じ王子だから気になっているだけだ、と自分自身を誤魔化していただけなのかもしれない。サリーがそんなことを考えているうちに、シャリーフはするりとサリーの服を脱がし、立ち上がると、自分の服を脱ぎ捨てる。そして顕になったサリーの肌をまじまじと見ながらこう呟いた。
「ほぅ、白い肌が桃色になってきたな」
シャリーフの言葉にサリーは恥ずかしくて顔が真っ赤になっていく。
「言葉で攻めるのやめろよ!」
「攻めて?何を言ってるんだ、愛の行為だ」
だめだ、シャリーフの話が飛躍しすぎる。サリーは諦めて抵抗をやめた。いや、受け入れることにしたのだ。
(俺もこいつに惹かれていたことを認めれば相思相愛ってやつなのか)
ポジティブな性格のサリー。この先のことはその時考えればいいか、とあっさり切り替えた。
自分の体を抱くこの褐色の王子に身を委ねるのもいいかもしれない。
「サリー?」
耳元で囁くシャリーフの声。ゾクリと体を震わせながら、サリーは微笑んだ。
「…いいよ、俺の肌じっくり味わって」
***
「よし、今日はここまでだな。サリー、お疲れ」
髭に手を当てながらナージは手元の書物を棚に戻しそう言う。今日は書庫の整理を二人で作業し、まだあと半分残っているが明日に持ち越しとなった。夏の国の歴史が詰まった書物たち。天井まである棚を見上げながらサリーはポツリとつぶやく。
「お互いの国の情報も、増やせば良いのにな」
「そうだな、お前みたいな間抜けなやつが来るからな」
ナージがニヤニヤしながらそう言うものだから、サリーは頬を膨らます。
シャリーフからこの国で暮らすように言われ、サリーもそれを望んだ。ただ一つ、肌の色が懸念材料だった。シャリーフの魔力であれば生涯、褐色肌を保つことは可能だが、サリーの白い肌を愛でたいと言われ、サリーは真っ赤になりながらこう答えた。
「今までみたいに毎朝、自分で肌の色を変えることもできるけど、皆にずっと嘘をつきたくない。俺は肌の色を変えずに暮らすよ」
その答えにシャリーフは微笑み、頬にキスした。
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