3.二人の王子

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しばらくしてサリーは自分から冬の国からの来訪者だということを城の仲間達に伝えた。ナージを始め使用人たちは当初驚いていたが、サリーはサリーだ、とナージが発言すると皆も同意し、それからはサリーは肌の色を変えず、白い肌で暮らすようになった。当初は町人の間でも好奇の目で見られたが、それも少しの間だけ。元々好かれていたサリーはあっという間に街に馴染み、国に馴染んでいった。 しかしそんなサリーでも、どうしてもこの国に来た理由を仲間に伝える勇気はなかった。それでもナージだけには『レッドクリスタル』の件を正直に話し、謝罪する。ナージは何も言わずにただ肩を叩いて『よく話してくれたな』と微笑んだ。 その後『ガーリブ王がラシード王の足を気遣い、サリーを使い薬を持ってきた』と門番達が噂をするようになっていた。美談はそのまま国王に伝わり、ラシード王はガーリブ王に感謝の意と贈呈品を送ったという。混乱したるのはガーリブだった。困らせてやろうとした相手から感謝されたのだから。 書庫の整理を終えて服についた埃を払うナージ。 「サリーのおかげで国同士が交流するようになったんだ。これからは春の国も、秋の国も交流するようになるさ」 そう言うと書庫のドアを開け、大きく背伸びをした。開いたドアの向こうから燦々と日光が部屋に注ぎ込む中、サリーは微笑んだ。 **** サリーが鏡に映る自分の体を見ていると、背後に上半身を露わにしたシャリーフの姿が映った。 「どうした?」 鏡越しに話しかけてくるシャリーフ。サリーは自分の右腕を伸ばし、呟く。 「少しずつ、肌に色がついてきたなあって」 真っ白だった肌は夏の国の日差しを浴び続けたおかげで、うっすらと色がつくようになっていた。このままだとシャリーフやナージのような褐色までいかないにしろ、白い肌ではなくなるだろう。 シャリーフは背後からそのサリーの腕を手に取りキスをする。 「せっかくの美しい肌なのにな」 何度触れられても、そのつど敏感に反応してしまうサリーは赤くなりながら振り向いて、シャリーフに聞く。あの甘い香りがしてサリーはクラクラしてしまう。 「白くない肌になったら、俺は用無しになる?」 用無しなんてならないと答えはわかっているのに、そんなことを聞くサリー。シャリーフはその可愛らしいことを言う唇にキスをする。 「そんなわけないだろう、私の愛しいサリー」 【了】
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