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どれくらい眠っていたのだろうか。眠りから覚めたサリーを襲ったのは激しい頭痛。思わず体を起こすと、そこは城の自室だった。
(あれ?)
頭痛のする頭でさっきまで街にいたはずなのに、と考えこんだ。たしか、桃を買おうとして……
「そうだ、桃!」
思わず大きな声を出すと、ちょうど入ってきたふくよかな体型の女性使用人が声を上げた。
「あらあ! サリーよかったわ。目が覚めたのね」
ベッドに駆け寄ると抱きしめられ、サリーはさらに混乱する。女性使用人はすぐ体を離すと今度は子供にするように頭を撫でた。
「市場で倒れちゃったのよ。それで、ここに運ばれて」
そういえばあの時、目の前が暗くなったのは倒れたからなのか、とサリーは納得する。しばらくすると部屋にナージも入ってきて、安心したような顔を見せた。
「医者は暑さにやられたんだろうと言っていたが、そんなに暑かったか?」
女性使用人にナージが聞くと首を振る。まさか暑さに慣れていないからなど言えなくて、少し疲れていたのかもしれないと伝える。
「あの……」
「気にするな。シャリーフ様も心配していたぞ。今日は外出されていてな、お供はいらないから、お前の看病をしろって言われたんだぞ」
全く、と言いながらサリーが無事に目を覚ましたことに嬉しそうな様子のナージだ。
「ご迷惑をおかけして……」
「今日までだからな? 明日からはまた働いてくれよ」
そう言いながら、木の器をサリーに渡す。中には冷えた桃が入っていた。
用心して一日体を休めるように言われ、夕食をとった早めにサリーは寝ることにした。まだ頭痛が残っているので、中々寝付けない。
ベッドに横たえた腕は、魔法が解けて本来の白い肌に戻っていた。毎朝の日課の肌色を変える魔法をかける瞬間、そういえば自分は他国の人間だったと気づく。そのとき、少しだけ胸が痛むのはシャリーフやナージをはじめ、皆に情が湧いたからなのだろうとサリーは思った。半年後には出て行かないとならないのだ。
一時間くらいしてようやく眠ることが出来た。途中何度か目が覚め、またウトウトする様な浅い眠り。何度目かの浅い眠りについているとき、カチャリとドアノブが回ったことにサリーは気がつかなった。
入ってきたのはシャリーフだ。ベッドに近づき、サリーの額に手をやる。熱がないことに安堵するとその手をほおに当てた。シャリーフの手が冷たくて気持ちいいのか、無意識に頬ずりする仕草にシャリーフが微笑む。
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