僥倖列車

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 朝、五時半、電車の暴力的な音で目がゆったりと覚め始める。 駅が近くて家賃は安いが、電車の音が非常にうるさいワンルームマンション。 三十半ばになってまで、独身で小汚いワンルームで目が覚めるたびに情けなくなる。  まだ目蓋が重くて開かない、冷蔵庫が遠慮気味にいびきをかいている。小鳥の優しい声をカラスの大声で掻き消して電車の轟音が全てを不快にする。   徐々に感覚がはっきり仕始めると同時に、とにかく仕事に行きたくない気持ちが溢れ出す。 今日行けば明日は休みだ。週休一日なので明日しか休みがないだけだ。  今日は同級生と飲む約束もあるので、普段の平日よりは幾分マシだな、と思いながら仕事へ行く準備を始めた。  
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