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コークーハイの苦さを思い出していると
「ねえ、これ見て見て」
陽菜の声で桜並木に意識が戻った。
陽菜が見せたスマホ写真には
山の中腹の広場に車を停めて
車の横に
アウトドア用のテーブルを広げ
椅子に座って微笑んでる陽菜が写っていた。
テーブルの上には
ワインとお手製弁当が置いてある。
「智樹が新車買ったからワインで乾杯しようって。
なのにコルク抜き忘れて。
広げたのしまって
コルク抜き買いに行ったんだよ〜」
「あるある、そういうこと」
このお弁当は陽菜のお手製?
「こういうのって
車に臭いとか残って気付かれない?」
「…」
「…」
「もう〜由紀乃のくせに〜」
「そういうとこ突っ込まない」
いつも私だけちょっと話しがズレる。
『由紀乃のくせに』
私は2人に言われるこの言葉が
気に入っている。
すごく距離が近い感じがしていい。
そう
それは突っ込んではいけないこと。
陽菜は恋人同士の演出に浸っていたいのだ。
それならそれでいい。
陽菜がそれで幸せなのだから。
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