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90分前:ようやく味方が到着する
「遅れてすみません。弁護士のセキグチです」
控え室の扉が空いて、セキグチ先生がやってくると私はほっとする。1対1じゃサキタさんには敵わない。2人目の常識人がやってきたことで、ようやくこっちが優勢になる。くせ毛が乱れていて、背広もそんなにパリっとしてないけど、まぁ人情派の弁護士だと思えば、そんな風にも見える。
「サキタさん、こちら弁護士のセキグチ先生。会見に同席してくれる」
サキタさんは、セキグチ先生をちらっと見た。敵か味方かを品定めする目つき。この人は私の味方ですよ。あなたの味方かどうかは、あなた次第です。
「先生。お辞儀の仕方なんですが・・・」
サキタさんが殊勝なことを言う。
「こんな感じでいいですかね」
と、サキタさんは高速で頭を下げた。ちょっと速すぎるのでは?
そして顔をクイっとあげると、セキグチ先生に目線を合わせたまま、ゆっくりと顔をあげていく。サキタさん、それヤンキーが喧嘩売る時のやつです。一番謝ってないやつ。
セキグチ先生は目を白黒させていたけれど、次の瞬間頬をゆるめた。
「いいんじゃないですか? みんな驚くと思いますよ」
サキタさんの顔もほころぶ。話せるじゃん、という顔になる。
おーい、私の味方であるところのセキグチ先生。そっち側にいかないでください~。
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