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誰にでもきっと、大切なものはあるのだと思う。
決して満ち足りているとは言い難い日々だったとしても、それがあれば気丈に振る舞える。そんな何かが、誰にでも、きっと。
例えば、私の場合。
学校はあんまり楽しくないけど、家に帰れば大好きな家族が居て、たくさん幸せをくれる。
それで、私は毎日を絶やさず紡ぐ努力をしようと思える。
父は私が生まれる前に死んでしまったけど、母と姉はその分以上に私を可愛がってくれたし、飼っている犬もよく懐いてくれていた。
……何故か母にだけは懐かないけど。
母は聡明で真面目な人で、堅実に働いてくれてお金に困ることはなかった。かと言ってお金持ちだったわけではないけど、私たちには充分だった。姉が倹約家だったおかげもあるかもしれない。
……そんなふうに、学校は少しだけ嫌だけど、家にはちゃんと居場所があって、それなりに幸せで。私にはそんな日々が大切だった。
でも、もしその大切なものが、突然消えてなくなったら?
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