可南子の桜

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 都市の病院に転院して間もなく、祖母のリハビリが始まった。  でも、リハビリをしたからといって麻痺が治るということではないと知ってがっかりした。  動く側の左半身を使って、少しでも介護を軽減するといったことらしい。  言語療法も上手くいっていない。  高齢者ということ、倒れてから発見までに時間がかかっていたことが理由らしい。  リハビリが頭打ちになると退院後の生活の話になる。  両親は施設に入れる手続きをすでに始めていた。  祖母の気持ちも考えずに。  「ねぇ、おばあちゃん、お家に帰りたいんだよ。  施設に入れるなんてひどいよ。」  「おばあちゃんがそう言ったのかい?」  「そんなこと言わなくてもわかるよ。」      「でも、無理に決まってるでしょ。あの家でおばあちゃんが一人で暮らすなんて。」  「じゃあ、私たちがあの家に引っ越して、おばあちゃんと一緒に暮らせばいいじゃない!」  「それこそ無理よ。お父さんもお母さんも仕事があるし、あなただって中学に入ったばかりなのよ。」  「おばあちゃんだって、あの不便な家で暮らすより、綺麗で快適な施設で暮らした方が安全だし、喜ぶと思うよ。  そりゃ、最初は戸惑うかもしれないけど。」  違う違う違う違う  (だって、施設にはおじいちゃんがいないもの)
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