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施設から病院に再入院したその冬、祖母は亡くなった。
中学生であった可南子は、やり場のない哀しみを両親への憎しみへと置き換えて酷く荒れてしまった。
高校では落ち着きを取り戻したものの、両親に対するわだかまりは残り、それから逃れるように東京の大学へと進学し、そのまま東京で就職をした。
現在の可南子には、あのとき両親が
祖母にとった行動が間違った物ではないと理解できる。
良く言えば愛していたから、大切にしていたからこその最善の処置。
悪く言えば、現実的にそうするしかなかったのだ。
今日、久しぶりに薄墨桜を見にやって来た。
春の日射しを浴びて、汗ばみながら駅から歩く。
思春期だった頃、そしておばあちゃん子だった頃の可南子を卒業するために。
可南子の目に、遠く薄墨桜が見えてきた。
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