可南子の桜

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 薄墨桜は太古の桜と呼ばれ、樹齢は1500年を越えるとも言われている。  ソメイヨシノとは違い、自生し自然の中で繁殖ができ、そして、杉や楠と同じよう環境によっては千年の時を越える桜である。  草原の中に堂々とたたずむ一本の桜。  いや、一本というにはあまりに太い幹、そして幾重にも別れた枝、そしてその先に広がるまるで銀河よような花びらに、幼い可南子は絶句し、息を飲んだ。  「すごい   ねぇ、おばあちゃん。   もっと近くでみたい!   近くに行こ!」  可南子はおばあちゃんの手を引っ張るようにして、草原の中、薄墨桜を目指して歩いていった。
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