欲情の朝

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欲情の朝

名前も知らない小鳥の声で深い眠りから目覚めた・・・・・外の桜の木に小鳥が止まっていた。 寄り添って寝ていたはずの乙哉がいない。 時間はすでに9時を過ぎていた。 今日はお互い休みのはず………ゆっくりと起き上がりベッドから降りた。 朝日がいっぱいに差し込むキッチンで乙哉は朝食の準備をしていた。 後ろからそっと近づいて抱きしめる。 乙哉が振り向き「起きた?」そう言ってにっこり微笑んだ。 乙哉を抱き寄せ口づける、次第に深まる口づけに乙哉が両手を首に回す。 照れたように乙哉が言った。 「朝からなんてキスするんだ」 「だってさ………ずっと我慢してたんだよ」 恥ずかしげもなく口にすると、乙哉の顔が朱に染まる。 「今日何する?」 「のんびりしよう」 「そうだね」 ただそばに居るだけで幸せだった、何も語らず何もせず、目の前に愛する人が居る、それだけで良かった。 朝食を済ませ、ソファに座ってテレビを付けた。 ワイドショーではコメンテーターが祐月のドラマの人気の秘密を語っていた。 祐月という俳優の魅力と将来について・・・・・女性アナウンサーも一人のファンとして熱く語っている。 「あのどこか無表情な感じが良いんですよね」 「そんな彼がふっと笑ってくれるとゾクッとします」 「最近の彼は大人の男の色気が出てますね」 二人で顔を見合わせて笑う! 「大人の男だって・・・・・色気出て来たんだ」 「そうかもね、愛する乙哉の事守りたいって思ってるからさ」 「そうなんだ、守ってくれるんだ」 「当たり前だろ、俺しか乙哉を守れるやつなんかいるか?」 「だったら、いつもそばに居て」 「わかってるよ」 あんなこと言ってるけど、仕事が始まればきっと仕事優先になるのはわかっている、それでも構わない! 今欲しい言葉を言ってくれるだけでいい。 祐月にとって、どれほど仕事が大事かは分かっている。 子供の頃からずっとこの世界で頑張っている祐月、家族の幸せのために頑張ったのに、気がついてみれば家族はバラバラになっていた。 何のために頑張ったのか分からなくなった祐月、それでも仕事が好きだから、この仕事を辞めるわけにはいかない。 それも全部わかっていて、祐月の事を愛した。 祐月に寄り添い、一生支えていく覚悟はできてる。 それでも、寂しい思いはしたくない。 祐月のそばで祐月の顔を見ていられるなら、それだけでいい。 ドラマは予想以上の反響を呼び、最終回はドラマ史上最高の視聴率をたたき出した。
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