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ヌード採寸の方が正確にサイズを測れると、教会御用達の仕立て屋さんから聞いたことがあります。できれば着る前に言っていただきたいものですが。
文句を飲み込み、渋々ワンピースの裾に手をかけたその時。突然腕が動かなくなりました。「何?」と尋ねる間にも、モアの白く骨張った手に両手首を吊り上げられます。
「アンタ、僕に言われたらなんでもその通りにするわけ?」
自分で人形になるよう言っておいて、今さらなにを言っているのでしょうか。不満をそのまま口にすると、吐息を感じるほどの距離で睨まれました。
「そんなに言うなら試してあげる……アンタの忍耐力」
氷混じりの息が頬にかかった後、急に腰の辺りが涼しくなりました。視線だけを下へ向けると、足元に黒い布が落ちています。ショーツの紐を外されたようです。
元々履いている意味のないデザインでしたから、別に構いませんが。
「今コレめくったら、全部見えるけど。いいの?」
「採寸するなら、結局見ることになるのではないでしょうか」
間違ったことを言ったつもりはないのですが、少し幼さの残る顔がより険しくなりました。紫色の唇に加え、両手を束ねている右手まで震えています。
「あんまり遅くなると、明日の学校に響きますよ。さっさと脱ぎますから離してください」
「あっ、ちょっと」
強引に腕を引き剥がそうとしたところ、モアの靴に足を引っ掛けてしまいました。床で受け身を取ろうと構えたものの、転倒は途中で止まります。
「薄着で暴れないでよ、無知シスター」
しっかりと背を支えてくれたのは、先ほどまで人を縛り上げていた腕でした。起き上がろうと軸足に力を入れると、背中に触れている手に力が入ります。
「支えてくださってありがとうございました。もう離して大丈夫ですよ」
歯を噛みしめているモアは、かすかに息が上がっています。そして相変わらず離してはくれません。半ば本気で胸板を押すと、今度はより強い力で引き寄せられました。
「モア? 本当にどうしたんですか?」
なぜ私たちはハグをしているのでしょう。胸同士がくっついているせいで、モアの鼓動が布越しに伝わってきます。顔は恐ろしいほどの無を保っていますが、心臓は忙しそうに走り回っていました。
「アンタ……その匂い、何?」
「匂い? あぁ、香油のことですか?」
モアの部屋を訪問する前、マチルダが全身に擦り込んでいた油。あまり鼻が利かないために気づきませんでしたが、まさか臭いのでしょうか。以前ノットの部屋へ行く前も香油を塗り込まれましたが、ノットには何も指摘を受けませんでした。
「それ、妙なもの入れられてる。多分」
「え!? 妙なって何ですか?」
モアは迷いなく「催淫剤」と答えましたが、ここでもアグネスとの予習が役立ちました。
「それって確か、性的興奮を引き出すための薬ですよね? えぇーどうしましょう。解毒方法はあるのですか?」
「そんなの発散する以外ないんじゃない……っていうか、アンタは平気なの?」
そういえば、前回も今回も特に異変はありません。モアは目を潤ませ、息を荒くしていますが。
「モアはこの手の毒物への耐性はないんですね。それで、発散というのはどうやるんですか? 私に手伝えることはありますか?」
少し待ってみましたが、返事はありませんでした。モアは私の肩に顎を乗せ、何とか呼吸を整えようとしています。
「ん?」
首筋に熱い吐息が当たる内に、自分の体が少しおかしいことに気づきました。モアの鼓動に引っ張られるようにして、心拍が上がっているのです。さらに体の中心に熱が集まり、頭がぼうっとしてきました。それよりも不可解なのは、モアに何かを期待している自分がいることです。
「これ……なに?」
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