ハイボールおかわり

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「巨乳に負けない魅力ってなんなんら!」  落ち着いた雰囲気のバーカウンターということもあり、私は完全に油断していた、小百合は言うやいなや椅子の後ろから胸を鷲掴みにしてきた。 「ちょっと小百合痛い痛い、三崎さん助けて!」  柔らかいから平気だと思ってるなら大間違いだからな、ほっぺたとかわき腹つねられるみたいに痛いんだからな!  慌ててカウンターから出てきた三崎さんになだめられて席に戻った小百合はカウンターに突っ伏してしまった、私が叫んだので他のお客さんも何事かと様子を伺っている、完全に悪目立ちだ。 「え?小百合泣いてるの?」  信じられない?!胸が痛くて泣きそうなのはコッチなのに何故に?「うううっ…」とか呻くように泣いているのが分かった。 「ぅう…長谷部の馬鹿ぁ…」 「ちょっ…何でそこで係長が出てくんのよ」  え?ちょっと待って、何で急に係長が出てきた?少なくとも今、係長の話なんてしてなかったよね? 「もしや…小百合殿?」  まさかね?まさかとは思うけど万が一って事もあるし、今酔ってるみたいだから…いや、いつもはホントに姉御の小百合が泣いてる顔なんて初めて見たし、何だか弱ってる美人を目の前にした私の中にサディスティックな自分が生まれてきたのが分かったからだ。 「ひょっとして長谷部係長の事…好き?」 「…うん」  か、可愛い!! 「え?いつから?やっぱり去年のプレゼンの時から?」 「…うん」  両手で掴んだ空っぽのグラスを眺めながら、これ以上涙を落とさないようにキッと口を結んだままの小百合は、まるで小さな女の子の様に素直にコクリと頷いた。 「係長に好きって言ったの?」 「…」  目を閉じたままフルフルと首を振った小百合が突然私に振り返った『あ、正気に戻ってる』質問の内容か首を振ったアクションか、或いはその両方がスイッチとなったのか、ハッとした顔からみるみる狼狽していくのが分かった、小百合の耳まで赤くなってるのは酔ってるからじゃないのは私でも分かる。 「わ、私何か言った?」 「そーゆーのいーから」 「違う、違うから!」 「違う違う、そ〜おじゃ、そ〜おじゃな〜い〜、ネタは上がってるんださっさと白状した方が楽になるぜ?」  いかん、楽しすぎてワンフレーズしか知らない曲が出てきた、多分今の私の顔はギャクマンガみたいな顔になってることだろう。 「あ〜…お代わり」 「え?まだ飲むの?」 「こんな話飲まなきゃ話せないわよ、お代わり!」  三崎さんも少し困った顔で「取り敢えず先にお水飲んだら?」と出されたお冷を半分くらい一気に飲み、ふ〜…っと深いため息の後話し始めた『いや、話すんか〜い!?』と心の中でツッコミを入れた事は黙っておこう。 「去年さ…初めて大きな企画に参加出来て結構頑張ったんだよ、でもプレゼンのさ…三日前くらいに生理が来てさ、いつもはそんなことないんだけど残業続きですっごく重かったの」 「うん」 「長谷部は『女なんだから仕方ない』って、私の分の仕事まで抱えちゃってさ…結局プレゼンは私が居なくても成功して、ホント何で女に生まれてきたんだ?って自分が情けなくなっちゃったんだ…」 「え?プレゼンの日休んでたっけ?」 「ううん、痛みは収まってたけどクマとかさ酷い顔してて『心配すんな俺に任せろ』って言われて別で待機してた」 「あ、そーゆー感じか」 「…うん」  確かに、体調悪いのとダブルで来たら動きたくないもんな〜。 「プレゼンが終わった後直ぐに長谷部が来てさ『お前のおかげだ、ありがとう』って言ったんだよ」 「え?まさかそれで好きになったの?」 「うん」  イヤイヤイヤ、安っすい!オタサーの姫安っすい!あれですか?弱ってたときに優しくされてキュンとしちゃったんですか?ヲタクキモって言ってたのに?チョロインか?オタサーのチョロインなのか?! 「大学生の頃とかはさ、何とな~く付き合ってたんだよ、一応セックスとかやることやってはいたんだけどさ、理想と現実って言うのかな…友達の延長みたいな付き合い方だったから、そんな『好きだ〜』とか無かったし、生理の時もそうだったけど、ちゃんと女扱いされたのって何か初めてだったってゆーかさ…」 「それにしたってさぁ…あ…」  そうだ小百合もヲタクだった、そして女子だった、スペック高めのイケメンに優しくされたらコロッてなるのは当然か…。
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