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「なぎさっていつからメイクしてる?」
え?突然何?オタクの話してたんじゃないの?いきなりの違うベクトルだった。
「え〜?二十歳過ぎて成人式の後くらいかなぁ」
それまでは口紅ではなく色付きリップとかだったけど流石に子供っぽいかなって思って化粧もするようになったっけ。
「何急に?オタクの話じゃなかったの?」
「オタクの話よ、私高校の時部活で真っ黒になってたから大学入ってからメイクしてるんだけどさぁ普通じゃんそれって?」
話の合間合間にハイボールを煽ってるけど、飲みたい理由は係長の事だけじゃなかったみたいね。
「それは知らんけど」
「高校生の時は周りの目なんか気にしないで真っ黒で汗だくでも良かったけど、大学生にもなっておしゃれのひとつもしないなんてね、一応女子だし」
私…2回生の終わり頃からだけどセーフよね、なんか私に対してもグサグサくる。
「サークルのみんなと話せるようになってきたと思ったら『姉御』ってあだ名つけられててさぁ3つ上の4回生とかも姉御って呼んできたのよ…」
「それはメイクのせいじゃないと思う…」
ちょっとツリ目で出来るOL風の見た目はもちろんの事、係長にも食ってかかるその男勝りな性格、私や後輩に対しての面倒見の良さ、いかにも体育会系といったサバサバ加減どこからどう見ても『姉御』だ、なんて的確なニックネームだろうか。
「末っ子お嬢様なのに…」
「お嬢様じゃないでしょ?だからオタクキモいで非オタと付き合ったの?」
「ううん違う、もちろん私もアイツらと付き合う気は毛頭無かったけどアイツらの方も私を恋愛対象としては見てなかったわ」
「え?小百合そんなに綺麗なのに?気後れしてたとか?」
「まさか、自分の見た目すら気にしない連中が女子に気後れなんかしないよ、コレだよこれ」
自分の胸を上からサーッと撫でた小百合は「結局胸なんだよむ〜ねっ!」そう言って私の胸を睨みつける。
「な、なによ?」
身の危険を感じた私は胸を隠しながら斜めを向く、ケッと悪態を付いた後最後の唐揚げを頬張ってハイボールで流し込んでいる小百合の怒りの矛先が何だか私(の胸)に向いている気がする。
「オタクの連中どころか非オタの男も結局はおっぱいを求めるのよ、私みたいな持たざる者は仕事に生きるしかないのよ…」
「持ってないって胸だけじゃん、他に良いのいっぱい持ってるじゃん」
「あたしゃいっぱいよりおっぱいが欲しいよ」
「何じゃそりゃおっさんか」
「と言うかハイボールもう一杯、つまみ無くなったけどもうちょっと頼む?」
「あ、そうだねメニュー頂戴」
晩御飯分のおつまみは食べきったのでこれからはお酒のアテになるような物を頼みたいけどカロリーが高めな物は控えたい、酢の物とか梅肉の乗った冷奴かな〜迷うな〜。
「すいませーん、ハイボールふたつとタコわさ下さい」
「え、私まだ選んでないよ」
「判断が遅い!」
「…それ言いたかっただけでしょ」
「へへっ」
してやったりという風に悪戯な笑みを浮かべているが、胸が小さいだけでこんなに美人を恋愛対象から外すとは、男って奴はホントに異次元の生物だ。
「ちょっと小百合明日休みだからって飲み過ぎなんじゃない?」
「そんなことないです〜」
「じゃあ途中で止まってるオタク男子のキモいポイント他に何があるのよ?」
「いっぱいありすぎて疲れた」
「ほら酔ってるからじゃん」
「そんな事言うなら凄い事教えてあげない」
「え?何よ凄い事って」
「しまった…」
「え〜?そこまで言っといて何?」
「ん〜今までの話を纏めるとだ」
小百合は何処かの名探偵よろしく人差し指をおでこに当てて考えるフリをしているが、今までってどこからどこまでを纏める気だろうか。
「長谷部のヤローはなぎさを狙ってる、間違いない」
「ええっ!?嘘だぁ〜?」
まさかの最初からまとめてソレ?
「何でそうなる?」
「言ったでしょ?長谷部はオタクだって、そしてオタクはおっぱいが好き、故に長谷部はなぎさを狙っている」
見事な三段論法、だけど私って言うか私のおっぱいを狙ってるって事?係長が?黒子のバスケの火神大我に似てる長谷部係長が?
「ひっ!?」
係長の顔を想像していたら目の前の友人の方が物凄い勢いで私の胸を凝視している、想像の上司と眼前の友人に恐怖を覚え思わず胸を押さえた。
「うちの課で1番大っきいのは間違いなくなぎさだな、ソレ何カップ?」
それ、女同士でもセクハラ案件じゃないですか?
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