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「誰がむっつりスケベよ?!」
「あんたよなぎさ、だから長谷部の話した後に変な感じでドキドキしてたんでしょうが?どーせ壁ドンとか恋人つなぎとか想像してたんでしょ?」
「あんな事言われたら誰だってドキドキするでしょ、でも言っとくけど係長の事が好きだからドキドキしたんじゃないからね、壁ドンとかも想像してない!」
幸いというか他のお客さんは離れた席にいた為こんな馬鹿な話も気兼ねなく話す事が出来た、小百合はグラスを傾けながらハンドサインで二杯目を頼んでいる。
「ハイハイ分かりました、でもこれ以上喪女拗らせてると色々大変よ?」
「なにが?」
「三崎さん、なぎさったらね…」
小百合は私の高校生時代の部活や中途半端な大学生時代など個人情報を勝手にバラし、若干キレ気味にこんな最終兵器持ってるくせに彼氏の一人や二人作れないのかとまくし立てた。
「ちょっと人のサイズとか勝手に話さないでよ、小百合だって彼氏の話とか無いでしょ?」
「私はあります〜ねぇ〜三崎さん?」
「そうですね…」
まるで子供がマウント取ってきた様な自慢げな顔の小百合と、三崎さんの苦笑いの様な笑み「ちょっと何二人して?」て言うか何で三崎さん?
「何度かデートで使って頂いてますよ」
「え?小百合、彼氏居たの?」
知らなかった、今まで彼氏が居るとかの話なんて全然聞かなかったんですけど?そりゃあそんなに美人なら居てもおかしくないけど、何度か?デートで?友人の意外…でもない話をされて軽くパニックになった。
「デートじゃないわよ、ナンパされたらココに連れてくるようにしてるの」
「ナンパぁ?!ど、何処でナンパなんかされるのよ?」
小一時間程前には『胸が小さいだけでこんな美人を恋愛対象から外してる』なんて勝手に思ってたけど、やっぱり第一印象は胸より顔だよね、さんざん胸の事言っといて何が『歩いてたら普通にナンパされる』だ、自慢か!
「私さぁ…男の人見る目無いって分かってるから三崎さんとかに『いい感じ』かどうか判断してもらいにきてんの」
だから三崎さん苦笑いしてたのか…。
「何で教えてくれないのよ?」
「私より経験少ないでしょ…って言うか付き合った事無いんでしょ?」
「あぁそうか…」
完璧な正論、確かに相談されても経験が無い以上は答えようが無い、相談されないのは寂しいけど相談されても困る話だった。
「なぎさに彼氏とか居たら相談するんだけどなぁ」
仮に私に彼氏がいたとして…小百合から相談を受けたとする…いや、小百合は企画会議とかにも呼ばれる程の出来る美人OLで私と言えば全然小間使いの雑魚キャラOL、スペックが違いすぎて仕事はもちろん会社の人から告白される事を想像をしただけで変にドキドキしてしまって恋愛相談なんて乗れる気がしない「それは三崎さんに相談した方が良いね」苦笑いでスルーパスを出すことにした、私では決定力不足だ。
「え?ちょっと待って私ですか?」
「三崎さ〜んお願いしますよ〜どうすりゃマトモな男と出会えるのかだけでも相談に乗って下さいよ〜」
ダウンライトが反射する程磨き上げられたカウンターに突っ伏して駄々っ子の様に足をブラブラさせる小百合を見ながら『小百合が言うところのマトモな男とはなんじゃろか?私はマトモじゃない男にも相手にされてないんじゃろか?』とメンタルがヤラれる謎が襲ってきた。
「『俺と付き合ってくれ』っていうクセに別れ話をしてくるのも相手からなんですよ、おかしくないですか?」
「まぁ…バーテンダーなんて仕事はお客さんの話や愚痴を聞くのも仕事の内に入ってるんだけどさ、一般論しか言わないわよ?」
「それでも良いですよ〜」
三崎さんはフフッ…と軽く微笑んで、水切りが終わったグラスをさらにピカピカに磨き上げながらそうねぇ…なんて考えてるみたい。
「そもそも小百合さんはどんな男の人がタイプなの?」
「…巨乳の女と浮気しない男が良い」
「なんで私を見るのよ」
ジト目でこっちを見てるけど小百合の彼氏と浮気どころか、付き合ってる男性を紹介してもらった事もない。
「随分ざっくりしてるわね」
「え?ちょっと待って、私に紹介しないのってもしかして私と浮気されるからって思ってる?」
「…うん」
「無い無い無い!いくらなんでもそれは無い」
今のところ彼氏が欲しい訳でもないしそんな彼女の友達と浮気するような男なんかより小百合の方が大切だ、ここは全力で否定させてもらう。
あ…全力と言えば…。
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