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 僕は叫ぶ。何か声を出さないと、志帆に聞かせないと。言い訳なのか弁解なのか分からない。でも言葉に出来ない。駄目だ。このままでは駄目じゃないか。「……んー……んー……」 隙間無く覆われた口から出るものは全て渚さんに飲まれ、言葉にならないものは何故だか淫靡に響いた。  隣室を見た。  西陽が射し込まなくなって、半分開いている襖の先は豆電球に光るマットレスの端と、  裏返しに脱がされた  薄桃色のセーターが見えた。 (……あぁ……)  膝から力が抜けて、バランスを崩した。  テーブルの角に膝が当たり、缶ビールがソファの方に転がっていく。  口と唇が離れる。  水泡が出来る。  ぱちんと弾ける。  一瞬だけ瞳を閉じながら、絶望の思考が(渚さんは甘くて粘り気があるな)と客観視する。 「柊くん、ソファに行こうよ」  渚さんに引き寄せられるように奥へ移動すると、襖の向こうは見えない角度になった。 「渚さん、あなたは」 「柊くん、私達は、飲みながら」  渚さんの背がソファの座面に付いて、僕は渚さんを見下ろす格好になる。僕の下に横たわる渚さんが、転がっていた缶ビールに手を伸ばして拾い、器用に開けた。ぷしゅ、と瑞々しい音が響き、泡がぽたぽたと溢れて渚さんの指を濡らした。 「飲みながら、しようよ」  
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