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  「お前ら、うまくいってんのか?」  テーブルの上のノートPCの文字を目で追いながら、斜向かいに座る拓真が僕にそう問いかける。 「なんなのいきなり」  拓真の奢りで買った目の前のホットラテは、もう温かった。返事の往復で思い出したように啜るそれは、甘いも美味いも曖昧な、微妙な味がした。 「僕らの恋愛事情なんて興味無いだろ?」  聞き返すと、拓真も「まあな」と答える。  年の瀬の迫る学生街のカフェは、人の数も疎らだ。  こんな時期、どうして他人の卒論を手伝わなくちゃならないんだ。心の中だけでそんな文句を呟いた。どうせ拓真は聞いちゃいない。僕が五日掛けて作った「拓真の」卒論の土台と骨組みを、拓真本人がノートPCの画面でチェックしている。ふむふむ、なるほど。__何がふむふむ、だ。卒論に全く手を付けていないせいで、この年末帰省もできなかった奴の台詞か。最後の頁まで読み終え、いよいよ拓真が口を開いた。 「クリスマスもこれ書いてたんだよな?」  
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